全体印象では「全身を使って力強くボールを投げている」かを判断します。全身をバランスよく使って、ボールを斜め上方に力強く投げ出すことができるとよいでしょう。
からだの部分の動きや様子については、まず「ステップ脚(投げ腕と反対側)が前に出る」かを見ます。幼児では両足をそろえて、あるいは投げ腕と同じ側の足を踏み出す例がよく見られます。次に「上半身をひねって、投げ腕を後方に引いている」かを見ます。胸が投げ腕側の側方を向く(右利きなら右側を向く)ように、腕を後ろに引くことができると、上半身がひねりやすくなります。幼児期には、動作の最初に上半身のひねりがほとんどなく、肘を屈曲させ、それを伸展させることによってボールを投げ出すといった未熟な動作パターンがよく見られます。次に「軸脚からステップ脚に体重が移動している」かを見ます。両脚を前後に踏み出していても、投げるときに前方(ステップ脚)への体重移動がないとボールを遠くに投げることはできません。「腕をムチのように振っている」かどうかは、ボール投げの動きの完成度をはかる観点といってもよいでしょう。具体的な動きでいえば、ボールのリリース前に投げる方向に向かって、肩がリードして腕やボールが遅れて出てくるような動きになります。全身を使った力強い動きの印象を導き出す大きな要素といえます。これらの評価のポイント(観点)は、おおよそボール投げの習熟過程に沿った項目になっています。
投動作は、最も男女の差が大きい動きです。全体印象による評価では、男子は幼児期に急激に動作が向上し、1年生で約50%が「よい(A評価)」、4年生では80%を超えます。「まあよい(B評価)」以上であれば1年生で約95%に達し、4年生では100%にさらに近づきます。一方、女子では、幼児期から4年生にかけて年齢とともに向上して「まあよい(B評価)」以上は1年生で約60%、4年生で約95%になります。しかし、「よい(A評価)」は幼児ではほぼ0%、4年生でも50%程度と低い値です。ポイントとなる観点についても同様で、男女差が大きい項目です。