近年、街に『ストレッチ専門店』を見かけるようになりました。日常生活でもデスクワークや立ち仕事で筋肉がある姿勢のまま凝り固まってしまうことが多くあります。縮んで硬くなった筋肉をしっかり伸ばして柔軟性を復活させる。リフレッシュにもなりますし、アスリートにとっても怪我予防の基本中の基本、当然草野球・少年野球プレーヤーの皆さんにとっても非常に大切なことです。今回はこのストレッチについてお話させていただきます。
基本をおろそかにしてはいけないのは、コンディショニングでも同じです。 ストレッチは、競技パフォーマンスを高めるだけでなく、ケガ予防の効果も持ちます。
特にこれを読んでいる皆さん。練習する機会が少ない草野球選手達の場合は、競技パフォーマンスが落ちやすいだけなく、
しっかり働いた週末の朝は筋力や柔軟性も低下してケガをしやすい危険な状況と言えます。正しいストレッチは誰でもどこでも取り組める効果的なコンディショニングの一つです。
できるだけ取り組んで、パフォーマンスアップ、ケガ予防に努めてください。ストレッチは、年齢を言い訳にしない最強のカラダ作りの 第一歩なのです。
やみくもに伸ばせばいいかというとそうではありません。試合前のストレッチ、試合後のストレッチ…効果と目的をしっかり理解する事。どの筋肉を伸ばそうとしているのか、しっかり意識して取り組んでみましょう!
ストレッチとは筋肉を伸ばす方法。
ここでは、関節をつなぎとめる靭帯や、あるいは神経系などを伸ばす手技も含めることにします。
ストレッチの効果:以下の2点をしっかり意識しながら取り組んでください。
ストレッチの種類:
やり方は大きく2種類に分けられます。静的ストレッチ
(=スタティックストレッチ)と動的ストレッチ
(=ダイナミックストレッチ)です。(今回はダイナミックストレッチの中でも特にバリスティックストレッチを
ご紹介します。)これらは試合の前後で行う順番を変える事をお勧めします。運動前に筋肉を伸ばし過ぎると、本来持っている収縮性が損なわれ、十分なパフォーマンスが出ないとも言われています。
その2種類のストレッチ、違いは以下の通り。
では具体的な手法を紹介します。
特にグランドで立った状態でできるものを中心に紹介していきましょう。
頚椎の回旋 |
首の準備運動は見落としがちですが頚椎の可動域をしっかり拡げておけばバッターボックスでも 投球が見やすく楽に強くスイングできるはずです。体ごと捻ると効果半減ですのでご注意。 |
胸椎の伸展 |
胸の張りは送球の際非常に重要な部位です。 ただし、腕を拡げ過ぎると肩関節脱臼の恐れがありますので要注意です。 |
胸椎、腰椎の回旋 |
体幹の捻り、腰の柔軟性は野球においては攻守共に不可欠です。 スイングした瞬間に「痛っ!」なんて事の無いよう、しっかり準備を。 |
腹直筋、脊柱起立筋 |
骨盤を動かさないように意識して、体幹の前後をしっかり伸ばしておきましょう。 |
僧帽筋上部など |
急な全力投球で肩を痛めるケースは非常に多いです。肩周りはしっかり伸ばして備えておくべきです! 頭を倒す角度を変えてターゲットの部位を変えることができます。 |
広背筋 |
投げる・打つ、いずれにせよ背筋のサポートは不可欠ですよね。最大限のパワーを発揮するために しっかり伸ばしておきましょう。 |
大殿筋 |
急激な全力疾走による肉離れがおきやすい部位です。各方向に対して十分に伸ばしてケガを 防ぎましょう。可能であれば寝転がってしっかり膝を引き寄せて伸ばしましょう。 |
大殿筋 |
これも寝転がってやればより簡単で楽なストレッチです。非常に大きな筋肉である大殿筋、どんなスポーツでも非常に重要なポイント。しっかりケアしましょう。 |
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草野球の試合中の体の動きを想定し、筋肉にその動きを憶えこませる、といった気持ちで。投球時の胸の開きや腕の振り、肩甲骨のうまい使い方をマスターすればパフォーマンスも向上するかもしれません。 |
僧帽筋中部、菱形筋など |
大胸筋 |
広背筋、大円筋、上腕三頭筋 |
大殿筋 |
股関節周囲筋群 |
体幹回旋筋群 |
腹斜筋群 |
バリスティックストレッチは筋肉のパフォーマンスを発揮するための準備として非常に有効です。ストレッチというととかく静的なじっくり伸ばすストレッチをやりがちですが、草野球試合前にはこちらの方が効果的であるといえます。 ウォーミングアップも兼ねて、投球・打撃の体の動きを意識しながら徐々に力を入れて伸ばしていきましょう。当然のことながらいきなり激しくやると怪我しかねません。慎重に。 |
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今回は若干難解な用語が出てきます。しかし、草野球を長く楽しむためには非常にためになる知識です。ぜひご一読ください!
言うまでもなく、肩は野球では非常に重要な関節です。にもかかわらず壊れやすい部位です。一度壊れると癖になりやすく、いつ再発するかわからない爆弾を抱えることにもなります。
今回は、野球選手の生命線とも言える肩におけるケガで代表的な、肩関節インピンジメント症候群について解説します。
特に、普段の練習が少ない中でいきなりゲームに参加したりすると、発生リスクは非常に高まります。ですが、きちんと準備していけば、インピンジメント症候群を防ぐことは十分に可能なのです。まずはこのケガの起こる状況と仕組みについて解説します。若干専門用語も出てきて難解ですが、わからない言葉は読み飛ばしても大丈夫です。まずは、こういうケガが野球では発生しやすいという事を理解してください。
このインピンジメント=衝突によって生じる肩の痛みなのかどうかを判断するためには…手の平を下に向けた状態で腕を横に挙げると肩が痛い、というのがよく見られる症状です。ただし初発からだいぶ時間が経過してしまった場合などは、痛みが出現する動作が様々であったり、痛む部位があいまいであったりします。腕を挙げて肩が痛む人は、一度整形外科医師の診察を受けることをお勧めいたします。
ローテーターカフと呼ばれる肩関節内の筋肉群の機能が低下している状態は、インピンジメントが発生しやすくなります。
ローテーターカフとは、肩関節の運動軸を安定させる役割が強い筋群(棘上筋,棘下筋,小円筋,肩甲下筋)や、肩甲骨周囲筋という腕の根元の肩甲骨を動かす筋肉の総称です。
肩は骨や靱帯の構造上、関節を作る骨同士(回転軸)がズレやすい特徴があります。ズレるとインピンジメントが生じやすくなります。したがって、ローテーターカフを強化し、肩関節の回転軸を安定させる必要があります。
*これらはよくインナーマッスルと言われますが、棘下筋は体表から見ることが可能なのでアウターマッスルなのです。「インナーマッスル=関節のスタビリティ(安定性)に重要」ということではないのです。
↑腕を横に挙げていくことで、上腕骨はその屋根となっている肩峰(肩甲骨の一部)に衝突することがある。
そのとき、ローテーターカフである棘上筋の腱、肩峰下滑液包などを挟みこんで傷つけてしまう。
また肩に負担をかけずに大きく腕を動かす為には、腕の根元の肩甲骨から大きく動かす必要があります。肩甲骨は腕の根元であり、そして腕(上腕骨)の屋根でもあります。したがってこの肩甲骨が動けば、腕は土台から動くことでより大きく挙がるし、肩の屋根も動くので上腕骨とぶつかること(インピンジメント)も少なくなります。
このとき肩甲骨を動かす筋肉で重要なのが前鋸筋です。大胸筋の斜め下にポコポコと見える筋肉です。この前鋸筋は、肩甲骨の関節の窪みが上を向くように、肩甲骨を回旋させます(上方回旋)。したがって、インピンジメント防止には前鋸筋の強化も重要です。